不動産を売却する方法は「仲介」と「買取」の2つに大別されます。この記事では、それぞれの基本的な仕組みと売却に至るまでの流れ、メリット・デメリット、売却方法を選ぶ際の判断基準について解説します。
[ライタープロフィール]
不動産ジャーナリスト
亀梨 奈美 (かめなし なみ)
大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。
不動産売却「仲介」と「買取」の違い
「仲介」とは不動産会社が売主と買主の間に入り、売買契約を成立させることをサポートする売却方法です。一方「買取」は不動産会社が直接売主から物件を買い取る方法を指します。

仲介と買取との大きな違いは「買主」「売却期間」「売却価格」の3つです。
■ 仲介と買取の主な違い
| 仲介 | 買取 | |
| 買主 | 主に個人の一般消費者 | 不動産会社 |
| 売却期間(引き渡しまでの期間) | 4〜6ヶ月程度が一般的 | 数日〜1ヶ月程度が一般的 |
| 売却価格 | 市場価格での売却が目指せる | 市場価格の6〜8割程度が一般的 |
仲介で売却する場合の多くは個人の一般消費者が買主となりますが、買取の場合の買主は不動産会社です。また、仲介では売買代金を受領するまでに4〜6ヶ月程度かかるのが一般的ですが、買取は数日から1ヶ月程度で売却が完了します。売却期間は買取に利があるものの、買取価格は市場価格の6〜8割程度になってしまうのが一般的です。
次章から「仲介」と「買取」それぞれの特徴を見ていきましょう。
仲介とは ー仕組みと売却の流れー
仲介で不動産を売る場合の流れは上図のとおりです。まずは査定を依頼し、仲介してもらう不動産会社を選定します。続いて、不動産会社と媒介契約を締結して売却活動がスタートします。

媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の中から選択します。売却活動では、ポータルサイトへの掲載や現地看板の設置、チラシの配布、既存顧客への紹介など、幅広いプロモーションが行われます。買主が決まり次第、売買契約を締結し、決済・引き渡しへと進みます。不動産の売却で譲渡所得(売却益)が出た場合や控除特例の適用を受ける場合は、翌年に確定申告を行います。
仲介のメリットは高額売却に期待できること

仲介で不動産を売却するメリットは、次のとおりです。
高額売却を目指せる
仲介によって不動産を売却する最も大きなメリットは、高額売却に期待できることです。一般の買主から幅広く募集できるため、市場での競争原理が働きやすく、結果として相場以上の価格で売却できる可能性もあります。
不動産仲介会社が多い
仲介業務を行う不動産会社は全国に数多くあり、売主は自身のニーズに応じて会社を選べます。実績や担当者との相性、広告戦略、査定内容などを比較しながら、納得のいくパートナーを選べる点も仲介ならではの利点です。
資金計画や税制面の相談もしやすい
仲介業務には、販売活動や物件案内だけでなく、資金計画や税制面などのサポートが含まれているのが一般的です。仲介会社には、住み替え時のローンや売却した後の確定申告などの相談もしやすく、場合によっては提携している金融機関や士業を紹介してもらうこともできます。
仲介のデメリット
一方で、次の点は仲介のデメリットといえます。
売却までに数ヶ月を要する
仲介による不動産売却の平均成約期間は、3〜4ヶ月程度です。売買契約から引き渡しまで1〜2ヶ月ほど期間が空くのが一般的なため、売買代金を受領するまでには4〜6ヶ月程度かかります。
とはいえ、これはあくまで平均的な期間です。仲介による売却では、買主が現れることが保証されていません。物件の条件や市況によっては、長期間売れない可能性もあります。
また、不動産を購入する一般消費者の多くは住宅ローンを組みますが、売買契約後の本審査に通らず、契約が白紙になることもあります。この場合、売却活動が振り出しに戻り、売れるまでにさらに時間を要することにもなりかねません。
仲介手数料の発生
仲介で不動産を売る場合は、不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。取引価格が800万円を超える仲介手数料の上限は法律で「物件価格×3%+6万円(税別)」と定められており、上限額が請求されるのが通例です。
契約不適合責任
仲介による売却では、原則的に売主が「契約不適合責任」を負わなければなりません。契約不適合責任とは、引き渡し後に契約に適合しない不具合や欠陥が発覚した場合に、修繕などの対応をしなければならない責任です。
契約不適合責任の有無や期間は契約ごとに異なりますが、一般的には引き渡し後3ヶ月程度を目安に設定されることが多く、売主にとって一定のリスクとなります。
内覧対応の手間
仲介で不動産を売る場合は、基本的に購入希望者の内覧を受け入れなければなりません。一度の内覧で成約に至るのは稀で、5回、10回……と内覧対応を重ねなければならないこともあります。
内覧前には家中を綺麗に掃除し、整理整頓する必要があるほか、内覧希望が入るのは土日祝日が中心のため、売却期間中は週末の予定が立てにくくなるというデメリットもあります。
仲介はこんな方におすすめ
- 売却価格を最優先したい:時間をかけてでも高値で売りたい人
- 時間に余裕がある:売却期間が長引いても問題ない人
- 人気エリアの物件:買主が見つかりやすい物件を売却する人
買取とは ー仕組みと売却の流れー
買取で不動産を売る場合も、査定や売買契約、決済、そして必要に応じて確定申告の工程は必要ですが、買主がすでに決まっているため売却活動は不要です。

買取業者が不動産を買い取る理由は、再販して利益を得るためです。買い取られた不動産はリフォーム・修繕によって生まれ変わり、リノベーション物件として販売されます。
買取のメリットはスピード感と手軽さ

買取で不動産を売却するメリットは、次のとおりです。
売却期間が短い
買取業者は、一般消費者のように複数の物件を比較したり、融資の選択に時間をかけたりすることなく、採算が取れると判断すればすぐに購入を決めます。販売活動も不要なため、早ければ1ヶ月以内で現金化が可能です。
仲介手数料が不要
買取は「仲介」にあたらないため、仲介手数料がかかりません。仲介と同様、売却に際して印紙税などの諸費用はかかりますが、売買金額の3%程度と高額になりやすい仲介手数料が発生しない分、費用負担を抑えられます。
契約不適合責任が免責
買取業者は、リフォーム・修繕することを前提に不動産を買い取ります。一般消費者のように建物の状態を重視しておらず、たとえ引き渡し後に設備の故障や内装の損傷などが発覚したとしても大きな問題ではありません。契約内容によるものの、多くの場合、契約不適合責任も免責になるため、売主のリスクが低い売却方法といえるでしょう。
手間・ストレスがない
買取は買主がすでに決まっていることから、広告活動や内覧対応が不要です。厳密にいえば、買取業者が物件を見に来ることはあるものの、家の整理ができていなくても買取の可否や価格に影響することはないため、隅々まで綺麗に掃除する必要はありません。
また、購入希望者から価格や契約条件の交渉を受けたり、買主の融資審査によって契約が白紙になったりすることもないため、手間やストレスなく不動産を売却できます。
現状のままでOK
仲介による売却では「空室渡し」が一般的です。契約で取り決めをしない限り、家具や家電、カーテンやエアコンなどすべての残置物を撤去したうえで買主に不動産を引き渡す必要があります。加えて、建具や設備の修繕が引き渡し条件になることもあります。
買取による売却では売主の負担で修繕やリフォームをする必要はありません。また、残置物の撤去をしなくても、室内をそのままの状態で買取をしてくれる会社もあるので、売却にかかる費用や手間を圧縮することができます。
買取のデメリット
一方、次のような点は買取のデメリットといえます。
売却価格が安い
先のとおり、買取業者は修繕やリフォームをしたうえで再販し、利益を得ることを目的に不動産を買い取ります。再販によって利益を出す必要があるため、買取価格は市場価格の6〜8割程度になるのが一般的です。早く、手間なく売却できるものの、少しでも高く売りたいと考える方には不向きな売却方法といえるでしょう。
対応できる業者が限られる
不動産を買い取るには、相応の資金力が必要です。また、リフォームできる技術、あるいはリフォーム業者との提携も不可欠であることから、対応できるのは買取再販を専門とする業者や一部の仲介会社に限られます。そのため、エリアや物件状況によっては選択肢が狭まる可能性があります。
買取条件がある
買取業者は、どのような不動産でも買い取るわけではありません。旧耐震基準で建築された物件や再販しても需要が見込みにくい立地の物件、再建築不可など法的に制限がある物件などは、買取の対象外となるケースがあります。
とはいえ、買取条件は買取業者によって異なります。中には、訳あり物件を積極的に取り扱う買取業者もあります。買取価格も一律ではないため、複数の買取業者に相談することが大切です。
買取はこんな方におすすめ
- 現金化を急ぐ: 転居の都合、ローンの残債処理、相続などで早期売却が必要な人
- 手間をかけたくない:内覧対応や契約不適合責任を避けたい人
- 訳あり物件:旧耐震、再建築不可、事故物件など、一般の買主が見つかりにくい物件を売る人
「仲介」と「買取」の違い比較表

ここまでのとおり、仲介と買取には買主や売却価格などにおいてさまざまな違いがあります。一概に「どちらが適している」とはいえません。仲介と買取の違いを理解し、物件の条件や状態、売却にかけられる時間、そして重視するポイントに合った売却方法を選ぶことが大切です。
■ 仲介と買取の比較表
| 項目 | 仲介 | 買取 |
| 買主 | 多くの場合、一般消費者 | 不動産会社 |
| 売却価格 | 市場価格での売却が目指せる | 市場価格の6〜8割程度が一般的 |
| 売却期間(引き渡しまでの期間) | 4〜6ヶ月程度が一般的 | 1ヶ月程度が一般的 |
| 仲介手数料 | 必要 | 不要 |
| 契約不適合責任 | 3ヶ月程度負うのが一般的 | 免責となることが多い |
| 内覧対応 | 必要 | 不要 |
| 向き不向き | 価格重視時間に余裕がある人気エリアの物件 | スピード重視手間をかけたくない訳あり物件の売却 |
賢い選択のための裏ワザ「買取保証」

仲介は高額売却に期待できますが、売却に一定の時間を要します。一方、買取はすぐに売却できるものの、買取価格は市場価格の6〜8割程度になるという欠点があります。どちらも一長一短ですが、両者の“いいとこ取り”ができる売却方法もあります。それが「買取保証」です。
買取保証とは、まずは仲介によって売却活動を行い、期日までに売れなかった場合に限り、事前に決めた価格で不動産会社が買い取ってくれるという仕組みです。高額売却を諦めず、なおかついつまで経っても売れないということを避けられます。ただし、買取保証価格は通常の買取価格より低く設定されることもあるため、条件を十分に確認したうえで検討することが大切です。
仲介・買取に対応!不動産売却はトレファク不動産にお任せ

不動産を売却する方法はひとつではありません。仲介と買取のそれぞれにメリット・デメリットがあります。不動産を売却する目的や事情に応じて、適切な売却方法を選択しましょう。
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